害虫被害と防衛応答の早期検出



 植物の防衛機構には、直接防衛と間接防衛の2種類がある。直接防衛とは、害虫の動きを抑える腺毛や、リポキシゲナーゼによる表皮の角質化、被害周辺の細胞を一過的に壊死させる過敏感反応などである。これに対し、間接防衛とは植物が害虫から被害を受けると、数種の揮発性化学物質(匂い)を放出し、それにより害虫の天敵を呼び寄せ駆除する防衛機構である。近年、自然の生態系を維持し環境にやさしい農業の候補として、間接防衛の利用(生物的防除)が注目されている。害虫被害(食害)を受けた植物では、体内で活性酸素が増加する。また、発生した活性酸素は匂い産出に深く関与することが知られている。

 そこで、本研究では生体内で生じた活性酸素に由来する極微弱化学発光(バイオフォトン)により被害の進行状況や食害を受けた植物から放出される匂いの情報(生成過程やそのストレス反応など)を調べている。その結果、食害に対する生理応答とバイオフォトン応答は密接な関係があり、バイオフォトン計測より食害を定量的に評価できる可能性が示されている。

 現在、九州大学大学院生物資源環境科学府生物学的防除研究室京都大学生態学研究センターと共同でバイオフォトンの放射スペクトル、匂いの化学分析、天敵の誘引時間などについて研究を行っている。




害虫被害を受けた葉からのバイオフォトン像