液晶エラストマーの物性研究

液晶エラストマーは、二つの大きな特徴を持った物質です。
 一つ目は、ゲルやゴムと同様に、高分子鎖が架橋分子により結ばれたネットワーク構造を持つために、ゴム弾性を持つ、ということです。二つ目は、液晶分子の配列による異方性があるため、液晶のような自由度が存在する、ということです。この従来のゲルでは見られない異方的な構造があることで、液晶エラストマーは従来の素材に比べ、電界印加に対して大きな変形が見られることが知られています。そのため、実用性の高いEAP材料として注目を浴び、世界中で研究が進められています。



 現在、ゲルやポリマーの研究において、ゲルやポリマーそのものを扱った研究や、ゲルやポリマーを溶媒により膨潤(膨らませること)させたものを扱った研究は多く行われています。また、液晶エラストマーの研究において、液晶エラストマーそのものを扱った研究は多く行われてきましたが、液晶エラストマーを溶媒により膨潤させたものを扱った研究はあまり行われていません。特に、液晶エラストマーを異方性溶媒で膨潤させた研究はほとんど行われていません。
 そこで私たちはこの液晶エラストマーを、低分子液晶の5CBやMBBAの中に入れて膨潤させ、その詳しい性質を理解し、新たな応用を見いだすことを目的として研究を行っています。

私たちはこれまで、膨潤した液晶エラストマーについて
・温度変化による形状(体積)変化
・電界印加による収縮
等を確認しました。

主鎖型液晶エラストマーの電気力学-光学効果


 私たちが現在行っている研究は、すぐさま実用に直結するというわけではありませんが、液晶エラストマーを人工筋肉の材料として使用するための手がかりとなるに違いないと考えています。


この研究はドイツのFinkelman教授、アメリカのCladis博士との共同研究として行われています。(論文1) (論文2)