複雑構造解析部門


 構成メンバー

部門長 本庄 春雄(九州大学・総理工研究院・教授)
太田 正之輔(九州大学・総理工研究院・教授)
山田 知司(九州工業大学・工・教授)
坂口 英継(九州大学・総理工研究院・助教授)
岡部 弘高(九州大学・工学研究院・助教授)
日高 芳樹(九州大学・工学研究院・助手)
桂木 洋光(九州大学・総理工研究院・助手)

 概要

 拡散に律速される結晶の成長は、フラクタル構造をとる。本研究部門はこのようなフラクタル構造を呈する非平衡散逸系に注目して、その形成メカニズムの解明とフラクタルを応用した新しい構造を定量化する手法の研究を続けてきた。その結果、これまでに拡散場で成長する結晶成長のパターン形成を、非平衡系における散逸構造としてとらえ、樹枝状結晶の様々な形態、異方性のない場合のフラクタル結晶(DLA)、枝の密集したDBM形態などを実験的に明らかにするとともに、数学的フラクタルモデルにおけるエントロピースペクトルを解析的に求め、数学的なモデルと実際のセルフアファインフラクタル構造のエントロピースペクトルを比較検討した。これらの成果を基に、新しい複雑構造の評価法および定義法を結晶成長や材料破壊現象など具体的例を当たりながら開発・研究する。


 研究ハイライト

総合理工学研究院  教授 本庄 春雄

[非線形・非平衡系の形態形成の研究]
非線形・非平衡系は複雑で多様な形態形成を示しますが、科研費の援助を受けながら、それらを、実験、シミュレーション、理論の立場から研究しています。以下に、主な研究テーマの概要を述べます。

[拡散場が造る形態形成の研究]
広く自然界で見られる拡散場は、樹枝状形態、密集分岐形態、フラクタル形態など多様な形態を形成します。これらは界面不安定現象、分岐枝の集団相互作用、系の異方性の役割など、多くの興味ある問題を抱えていますが、それぞれの形成メカニズムを解明するとともに、それらの転移機構を統計力学的な立場から実験やシミュレーションから研究しています。

[拡散律速凝集体の研究]
拡散律速凝集体は拡散だけで形成されるフラクタル形態ですが、非常に単純な形成プロセスゆえに、豊富な基本的問題や応用を含んでいます。多くの研究が今までなされてきましたが、我々は、この分岐形態を1次元的な離散モデルで表現する方法を開発し、拡散律速凝集体の安定性を議論するため、その1次元モデルのダイナミックスを調べています。

[樹枝状形態の研究]
樹枝状形態は樹木に似た形態を示します。主幹の先端部分の形成については解明されましたが、樹木のような全体の形成メカニズムはほとんど解明されていません。それらは、各枝の拡散場中での競合によって形成されますが、そのメカニズムを実験的に解明する予定です。

[多重アフィン成長界面の研究]
べきノイズを印可した1+1次元弾道軌道凝集モデルを数値計算により研究しています。時間軸でのゆらぎを定量化するq次成長指数と空間軸でのゆらぎを定量化するq次粗さ指数の計算を行うと、それぞれがともに多重フラクタル的性質を示すことが分かります。このとき、高次成長指数が印可するべきノイズのべき指数に依存しない領域があり、その漸近挙動などを中心に研究を行っています。また、弾道軌道凝集モデルが属すると考えられているKPZ方程式系のスケーリング則α+α/β=2の、高次の成長指数・粗さ指数における成立性を調べ、KPZスケーリング則の普遍性を確認しています。
 紙の燃焼進行界面の実験において成長指数と粗さ指数の多重フラクタル性が報告されており、その挙動がモデルのもと異なるっています。実験とモデルとの相違点の明確化、モデルの改良などは今後の課題です。また、時間軸、空間軸のゆらぎの分布の相関の様相の詳細についても検討する予定です。

[衝撃破壊の統計的性質の研究]
脆性物質の衝撃破壊によりその破砕片の質量分布がべき分布となることが広く知られており、多くの数値計算も行われています。我々は、衝撃の加え方とべき分布の指数が関係すること、破壊-非破壊相転移が2次の相転移となることなどが数値計算で予言されていますが、これらの性質を実験により検証しています。

[複雑な時空パターンの研究]
熱対流や液晶の電気対流では、はちの巣状やロール状のパターンが生じます。。温度差や電場の強さを変えると、乱れたパタ?ンや局在パタ?ンのようなさらに複雑なさまざまな時空パターンが生じます。モデル方程式の計算機シミュレーションによって、様々な時空パターンの生成メカニズムを理解しようとしています。

[引き込み現象の研究]
リミットサイクル振動子やカオス振動子を結合すると互いの振動数や位相をそろえる相互引き込みと呼ばれる現象が生じます。振動子を多数結合した系に生じる集団的相互引き込みのようすや逆に相互引き込みが動的に不安定化する様子を計算機シミュレーションによって調べています。また、ギンツブルグーランダウ型の偏微分方程式や結合写像系を用いて、成長パターンのシミュレーションやイジングモデルのシミュレーションを行っています。


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